日記というか。

……まあ、日記です。同人向注意。

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花格子 25

花格子最終話です。
いやあ、長かった。2009.07.05に連載開始だったので、完結まで約3年間かかりました。書き始めた当初は、まさか完結できるとは思っていなかったのです。応援してくださった方に感謝を!
でも、もうちょっとだけ続くんじゃよ。番外編の三兼過去話と、裏に幸兼初夜あげます。しばらく時間かかりますが。

それでは、どうぞ~。






どのくらい、そうしていただろうか。
泣き続ける兼続を優しくあやしてやりながら、幸村はそっと兼続の身体を横たわらせた。
「ゆき……むら、」
「兼続殿……婚礼を、挙げましょう。二人きりの婚礼を」
小さく、本当にそっと。幸村は兼続の唇に唇を押し当てた。そして、笑った。
「私の花嫁様。私の物にしてしまって構わないのですね」
「うん……」
ぼんやり、と熱の篭った声で兼続は答える。仄かに上気した頬、黒く艶やかな下ろした髪に、何処からか吹き込んだ桜の花弁が降り頻る。
「嗚呼。貴方はまるで桜の精の様。散らしてしまって、よろしいのですね。優しくはできませんよ。こんなに待たされたんです。激しく、してしまいますよ」
「うん。それでいい。激しく……してくれ」
兼続は夢幻の様にそう言うと、幸村の首に腕を回した。
近づく顔と顔。互いに、ゆっくりと目を閉じた。
そして。

すっぱーん

「おめでとう!貴様等!」
三成の大音声が部屋に響いた。
「……え?」
同時に幾人もが部屋に雪崩れ込んできて、灯される明り。辺りは真昼の様な明るさになった。
幸村は事態が把握できずに呆然としている。
「あ。忘れてた。皆、事の成り行きを気にしてくれて、近くの部屋に待機していたのだ」
「忘れないでください!」
慌てて身を離す幸村。
「ははは!すっかり忘れていた!」
いつもの通りの明るい笑い声に、幸村は毒気を抜かれて鼻白んだ。
そんな幸村の前に、三成が仁王立ちになる。
「おめでとう。幸村。兼続。すまんが、初夜は後にしてもらえるか?お前達を祝いたいと、多くの馬鹿共が集まってきてしまっているのだよ。本当は兼続の失恋慰安会だったのだが……まあ、このまま祝言のお披露目会に変更すればいいだけの話だ」
「あ。はあ。ありがとうございます?と言うべきですか?」
「礼はいらねえぜ!はっはぁ!」
慶次が、両腕に巨大な酒樽を抱えて笑っていた。
「なにせ、皆、喜んでんだ。まさかお前さんが兼続と祝言を挙げるなんて上手い事になるとは思わなかったんでな。終わった恋話より惚気話を肴にした方が、酒が旨いってもんよ」
「俺は呑めればどうでもいいんだけどな」
孫市が、ひょい、と慶次の後ろから顔を出す。その顔を見て、幸村が目を丸くする。
「おっと、嘘だよ。流石に不幸よりも幸せになった方が、酒が旨い」
「居た……んですか?」
「そうさ。俺は兼続の兄貴分だから、こんな重大な話の時に居ないと可笑しいだろう?」
「そんな事より御馳走さ~!さあ、がんがん喰うでぇ!」
秀吉が、馳走の入った皿を運んでくる。その後からも、男達がどんどんと皿を運ぶ。
「なんで、俺達まで……関係ねぇだろ、三成ぃ!」
「俺の友の祝賀だ。お前達も参加しろ。只で飲み食いさせてやると言っているのだ。ありがたく思え」
「ちくしょ~!」
「正則、黙って運べ。馬鹿」
そんな遣り取りが聞こえてくる。
その隣では政宗と景勝が、憮然とした顔で酒盃を皆に配っている。
「失敗すればよかったのに。そうすれば、兼続が儂の物になる機会もあったじゃろうに」
そう政宗は悪態吐いてくるが、景勝は無言で幸村に杯を突きつけてくる。
「あ、ありがとうございます」
「ん」
一言だけ答えると、兼続へも杯を渡す。少しだけ、無言の状態が続いた。目と目を交わしあった後、ぽつりと景勝が呟いた。
「兼続……似合っている」
「ありがとうございます」
「え?」
「この白無垢は、景勝様に誂えてもらったのだ」
「そう……だったんですか」
「うむ」
相変わらず感情の読めない表情で、景勝は呟く。己以外の誰かの為に装う兼続の姿を見て、景勝はどう思っていたのだろうか。
「酒は上杉の銘酒を集めてきましたよ。可愛い兼続の為ですものね」
綾が、にっこりと微笑んでいる。その隣では見知らぬ男が酒樽を黙々と運んでいる。
「こちらは……?初めてお会い致しますが」
「我は謙信。兼続の師也」
「おお!謙信公まで!」
「うむ。愉悦。兼続、そなたの愛の戦、見事勝ち取ったな。まこと天も嘉したもうぞ」
「勿体なきお言葉!」
「うむ」
そして、酒樽の封を手刀で開けて、武蔵野の杯も及ばない程の大杯で酒を飲みだした。
酒樽の山の前で、手を叩いているのは、半兵衛だ。
「さっすがオレ。見事に二人をくっつけちゃったよ。すごいすごい。官兵衛殿褒めて~」
「卿は面白がっていただけであろう」
「酷いな~。苦心したオレの策を一刀両断だよ、この人。オレには、最初からちゃあ~んとこうなるって分かってたんだから!」
「そうか」
「もう~。……あ、失恋を慰めあう会はこちらですよ~」
ぱんぱん、と手を叩く半兵衛に、近づく影が幾人か。
「なんなのよぅ!好い男同士でくっついて、こっちには全然寄ってこないんだから!」
「甲斐ちんは、まずその性格をなんとかしないといけないにゃ~」
「なんですって、くのいち!……あ、政宗もこっち側でしょうが!あんたも来なさい!そしてあたしの失恋話に付き合ってよ!」
「何故儂が……。儂は失恋などしておらぬわ!」
「あんた、まだ諦めてないの?いいから、こっち来る!」
「大力で引っ張るな馬鹿め!そんな暴力的だから婚期が遅れるのじゃ」
「き~!言ってはならない事を言ったなぁ!」
小競り合いを始める甲斐と政宗の隣で、くのいちは黙々と酒を呑む。
「……お幸せに、幸村様。でも、今日くらいは、呑ませてくださいね。そうじゃないとやってられませんよぅ……」
ぽつり、と呟いた声が、耳の良い幸村には聴こえてしまった。
なにか、言った方がいいのか。そう幸村が考え込んでいると、慶次が景勝の肩を抱いて、失恋組の輪に入り込んでいった。
「おう、呑んでるねぇ。その中に、ちぃと俺達も加えてくれんかね。『女郎買い振られた奴が起こし番』なんてぇ言うが、振られた方は堪ったもんじゃないね。これぁ呑まにゃあやってられねぇ。な、景勝さんよ。まずは一献」
「……」
相変わらずの無言だが、景勝は慶次に注がれた酒を一気に飲み干した。
「お。やるねぇ。さあ、どんどん呑みな」
その隣では、阿国と五右衛門が酒を呑んでいる。
「やあ。役得やぁ。好い男はんが並んでるの見て呑む酒は最高やなぁ」
「阿国さんの方が白無垢は似合いますって!なんなら、俺様が盗んで参りやしょうか!そそそ、そして俺と……!祝言を……!」
「ええのん。うちはこれで十分。さ、お祝いに一指し舞おうか。……と思ったんやけど、人だらけで狭いなぁ。うふふ、祝福してくれる人がこんなに居てはるなんて、なんて冥加なお人達や。代わりにもう一杯呑も」
「阿国さ~ん!」
わいわいと賑やかな喧騒の中から、一人、ふらりと幸村に近づいてくる人影があった。
「あ……左近殿」
「よう。上手くいったみたいですね」
「ありがとうございます」
「その事なんですけどね。あんた、何処かの娘さんと祝言、挙げるんじゃなかったのかい?確かに『真田の若君、婿へ行く』ってぇ聞いていたんで、どうもそこが気になっていましてね」
「ああ。その事ですか」
幸村はぽりぽりと頬を掻く。
「あれは、兄上の事です」
「幸村さんの兄?幸村さんの兄だったら、家を継ぐ嫡男じゃないんですかい?」
「いや、そうなんですけど……特例でしてね。私の兄上が、さる大名家の御息女に見初められたらしいんです。それが、徳川にも縁のある由緒正しい大大名の家でして。その大名家には跡継ぎの男子も居ないという事で、兄上が婿入りする事になりました。こんな事、滅多にある事ではないのですが……」
「ははっ!なるほど。それで幸村さんは、跡継ぎの座と花嫁とを同時に手に入れる事が出来た、と」
「そうなりますね」
「滅多にある話じゃないね。いや、目出度いじゃないですか」
「そうですね」
「しかし、そうすると……」
左近は顎に手をやって、意地の悪い笑みを浮かべた。
「跡継ぎともなると、それこそ良いとこの娘さんを嫁に貰わないといけないんじゃないんですかい?」
「そんな通例は捻じ曲げます。私の嫁が務まるのは兼続殿だけですから。跡取りには養子を貰いますから大丈夫です」
「ははは。そこまで言うなら大丈夫でしょう。どうぞ、お幸せに」
ひらひらと手を振って去っていく左近の背を見送ると、兼続が不安そうに幸村に話しかけてきた。
「幸村……本当に、私でいいのか?」
「貴方以外に誰がいるのです」
幸村は、兼続の目を真っ直ぐに見て、言った。
「私の、生涯の伴侶は、貴方だけです。……愛しています」
「うん。私も、愛しているよ……お前だけを」
そっと兼続が伸ばしてきた手を、幸村は強く強く握り締めて、最後にはっきりとこう言った。
「愛しています。だから……私と、結婚してください」
「……はい」
兼続は微かに俯くと、目元を朱に染めながら、幸村の言葉に答えた。


二人の婚礼は、『普通』とはかけ離れたものであったが、賑やかに、華やかに、多くの人々に祝福された。
その後、二人で辿る人生の道程も、同じく祝福に包まれた温かく幸せなものであったという。



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