日記というか。

……まあ、日記です。同人向注意。

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花散らしの雨 1

三兼小説過去話、はっじまるよ~。







初見は、最悪だった。
「今日からお前達の仲間になる、与六じゃ。皆仲良うしてな」
その場に居たのは、俺、佐吉と、虎之助、市松。どれも見飽きた顔だった。だが、その日入ってきたそいつは、そのどれとも違う顔立ちをしていた。
色が白い。泥と垢に塗れた格好だったが、その位の判別は辛うじてついた。俺も色白の体質だが、与六の白さには負けた。それに、眼。爛々としたお虎や市松とはまた違った生気に満ちた目だ。なにが与六をそうさせるのか。
「……どうせ、売られてきた身の癖に」
そう俺が呟くと、じろりと秀吉様のよく動く目が俺を捉えた。
「佐吉。与六を風呂に入れてやれい。ああ、与六はここいらが珍しいだろうから、見物がてら町の銭湯に案内してやれ」
「なっ……どうして私なのですか、秀吉様」
「お前等は相性がよさそうだでな」
言って、自分でも可笑しいかの様に笑う秀吉様。……絶対、そう思ってない。
「よろしく。佐吉」
与六は与六で、そんな事を言って人の良さそうに笑いかけてくる。
「……」
俺は、唾を吐きたい気分になった。



「なんなのだ、お前は!」
ごしごしと与六の背中を手拭いで擦ると、垢がぽろぽろと際限なく落ちてくる。
「あいたた、佐吉!痛い痛い!もう少し優しくしてはくれまいか」
「……」
背を擦る手を休めると、与六はこちらを振り向いた。
「さて、次は私が佐吉を擦る番だな」
「俺はいらん」
「そうつれない事を言うな!優しくしてやるぞ!」
笑顔で腕を掴まれる。見かけによらず、凄い力だ。
「……」
俺は無言で背を向ける。
嬉々として俺の背中を擦り始める与六の力は、成る程、程良くて気持ちが良い。
「……俺は、秀吉様の養子だ」
「うん」
「お前は、どこぞから売られて来たのだろう。おそらく、貧しい農民の家だろうな」
「驚いた。そんな事まで分かるのか?」
「見ていれば分かる。商売柄、そんな奴は腐る程見飽きているのでな」
与六の腕の力が、少し弱まったような気がした。
「俺はお前を見下したりはしない。しかし、対等に付き合うつもりもない。そこの所、良く弁えておくのだな」
「なんだそれ」
あはは、と与六は笑った。ばんばんと背中を叩いてくる。
「佐吉は面白い奴だなぁ」
「お前は、身の程を弁えろと言っているのだ。どうせ、」
(どうせ、お前は商売道具なのだから)
という言葉は、流石に喉から出るのをためらわれた。
「……どうせ、此処の暮らしが厭になって飛び出すのも、そう遠い話ではあるまい」
ごまかす様に言った俺の言葉を鵜呑みにして、与六はその大きな目を見開いた。
「そんな事はない!私は頑張って見せるぞ!……私の家族の為に」
『家族』という言葉を口にした時、少しだけ与六の瞳が揺れた気がした。
(……だから、嫌いなんだ)
この与六はまだ分かっていない。此処は遊郭。頑張っても、逃げても、愛しても、所詮は籠の鳥でしかないのだ。ぼろぼろになるまで見世物になって、使えなくなったら次の鳥に替えるだけ。
此処は地獄の釜の中。それを理解していない、きらきらとした瞳は、俺が何度も見てきた。そして穢れるのも何度も見てきた。だから嫌いだ。
「俺は、お前が嫌いだ」
はっきりと告げると、与六は驚くべき事に、にっこりと笑った。
「そうか?私はお前が好きだ」
その笑顔がとても眩しくて、でも、それが程なく曇る事を想像するだけで遣る瀬無くなって。俺は、ただ、顔を背けて湯の中へ入っていった。

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